人活辞典

世間人間で恙無く暮らすための道しるべとなるように書いているつもり

保護者能力欠損個体選択型発電装置

【ほごしゃのうりょくけっそんこたいせんたくがたはつでんそうち・ホゴシャノウリョクケッソンコタイセンタクガタハツデンソウチ・hogosyanouryokukessonkotaisentakugatahatudensouthi】 

 

 

この画期的な発明の構想自体は21世紀以前にも存在していた。技術的にも可能であったにもかかわらず実用化が遅れたのは「大人の人権を守るためなら、子どもの人権を侵害しても構わない」という浅ましい思想の持主が政治的経済的に台頭する時代が続いたのが原因である。

 

この画期的発明が実用化されているのは22世紀のタウゲンラントである。

 

人間には生殖活動は行うが出生後の我が子を健全に育てる能力が低い個体が存在する。

子どもを肉体的心理的に虐待する親や、自身の理想を押し付け理不尽な干渉を行う「毒親」などである。

また、未成年者に対して性欲を催すという生物として異常な、本来ならばこの世に存在することが許されない不届きな個体も残念ながら存在している。

未来を担う子どもは社会全体にとって宝である。この宝を損なう危険性のある人間は子どもから隔離し害悪が及ばないように適切に扱わなければならない。

「保護者能力欠損個体選択型発電装置」はこれらの「子どもに害悪を与える危険性を持つ大人」に設置する条件発動型発電装置である。

通常時の外観は正常国民と特に変わりはない。しかし、彼らの脳にはセンサーが取り付けられており「子どもに害悪を成す言動」をしようとした瞬間、背部に埋め込まれた発電装置からパイプユニットが伸びだして当該人物の口と肛門を連結する。

この状態で当該人物は最寄りのゴミステーションに強制移動される。ゴミステーションには生ごみ専用ユニットが設置されており、当該人物の背部装置から伸びた「燃料供給パイプ」が生ごみ専用ユニットに接続されると発電が開始される。燃料供給パイプを通じて液状の有機物が当該人物の口と肛門を連結しているパイプユニットに供給される。

電力供給人間に食餌と排泄の心配はいらない。彼らは発電装置と一体化することで「疑似的永久機関」となっている。

発電によって得られた電力は当該人物の頭頂部から発信される電波の形式で上空の衛星に送られ、社会のために役立てられる。この発電機能の継続は当該人物の「害悪度」の軽重により確定される。重度の「子どもに対する加害大人」の中には10年以上発電を続けている者もいる。

「子どもに害悪を与える大人」は本来その生存すら許されないが、これまでの刑法では懲罰が難しかった。この「保護者能力欠損個体選択型発電装置」は子どもとその未来を守り、粛清されるべき害悪ある大人の命をむやみに奪うことなく「社会的制裁を与えながら発電装置として有効利用」する点でこれまでのコストばかりかかる「懲役刑」や「死刑」よりも優れている。