人活辞典

世間人間で恙無く暮らすための道しるべとなるように書いているつもり

ばんえい競人

【ばんえいけいじん・バンエイケイジン・Banei-Keijin】

西暦20XX年、人類の某国は人外勢力の支配下に置かれていた。

人類以外の生物の権利を守るため、競馬は競人に改められた。

ばんえい競人は「富と権力をいたずらに独占し民衆を苦しめた為政者や富裕者」に荷物を引かせて走らせ、その順位を競い賭けの対象とする、新しい賭博である。

この賭博に参加できるのは人外と動植物と人類の民衆たちである。

出走する人物にはその罪を明らかにする「競争人名」がつけられる。

「イジメインペイ」「ショッケンランヨウ」「モラハラシツゲン」「ハンシャヒイキ」「ソンタク」「バイコクド」など

引かせる荷物の重さはこれまでの人生で搾取してきた人間の数に比例させる。

ばんえい競人では各種薬剤や人体改造手術に制限はない。競人の身体機能を強化すれば、顔面を蹴ったりしなくてもスムーズに走るので見苦しい暴力を振るわずに済む。製薬会社や医療系研究機関の関与は「競争人データリスト」に必ず記載され、レース予想の材料とされる。競人の成立により合法的人体実験が可能となり、薬剤や遺伝子組み換え技術や外科的手法による人体強化の技術が飛躍的に発展した。

国民は競技場で走る政治的道義的犯罪者達の変わり果てた姿を見て、権力と富を独占する行為の愚かしさを思い知り、反面教師とする。

感染症予防と事故防止のため、競人場は無観客。希望者はホログラムのアバターを観客席に座らせることが可能。